我々は本能に逆らうことはできるのか

近年の生物学の基礎的な考えは、「生物の体は遺伝子の乗り物で、遺伝子が自らの利益を求める」というものである。これに対し、多くの批判があり、その一つは、「我々人間に限っては、遺伝子に逆らって行動することができるのではないか」というものである。

確かにそのように見えることが多い。遺伝子が自らを残すように動くのであれば、男性は女性をレイプするのが正しいように思える。また、性交渉の際に、コンドームをつけなかったりすることも考えられる。

しかし、このような例も大抵は遺伝子の利益で説明がつく。上の例でみると、そのような行為は社会的に許される行為ではなく、それを行うと、自分の身が拘束されたり、殺されたりして、未来の可能性を摘んでしまうことになりかねない。また、一度子供を作るのに成功しても、その子供が良い環境で生まれてきたり、育てられたりする可能性は低い。

このように、一見道徳的、社会的な行動は遺伝子に逆らったものに見えるが、実際は遺伝子のための行動と言えることがほとんどである。