知識が人の行動に与える悪影響

知識によって行動は変わるのは自明である。例えば、時給1000円の飲食店で働いている人が、時給2000円の飲食店の存在を知れば、その店に雇われるために行動を起こすだろう。また、雇用のない環境にいた人がインターネットで雇用のある場所を探すかもしれない。

このように、知識が人の良い行動を生むことはよくあるが、逆に悪い影響を生むこともあり得るのだろうか。

例えば、100ドルゲームというものがあり、AさんとBさんで100ドルを分ける、というゲームがある。いくらずつ受け取るかはAさんが決めることができるが、Bさんがその金額に納得できなければ、どちらもお金を受け取ることができない。

この場合、経済学を勉強している大学院生がAさんの役をやったとき、心理学や数学など、他の教科を勉強している大学院生よりも、全体的に高い金額を提示したらしい。(例えば、Aさんは99ドル、Bさんは1ドルのように)

この差は知識によって生まれたものだと考えられる。経済学では、人は利己的で、利益を最大化するために理性的な行動をする、と教えられるから、Bさんはどんな金額でも受け取る、と考えるのだ。よって、Aさんは自分が受け取る金額をできるだけ大きくする。

しかし、これは一般的な人との行動とは異なる。つまり、学問をすることによって常識から外れてしまったのである。また、その知識が間違っていた場合、間違った知識によって行動が変わり、困ることもあるだろう。

このように、知識は良い方向に人を導くことを期待できるが、悪い方向に導くこともある。